【婚約破棄になったぼくが恋愛工学をはじめた理由・その2 初陣】
前回↓
「クソ、クソ………クソ!」
隣からは聞きなれない寝息が聞こえる。でも、おそらく起きているだろう。
それは僕だって同じだった。
失敗したーーーー
いまの僕なら、簡単に攻略できただろう。
その娘の口先だけの言い訳もかわし、シットテストもクリアし、自信満々に振舞えた。
でも出来なかった。
経験不足……も勿論あるが、恋愛工学のなんたるかを、ぼくはまだ理解していなかったのだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
婚約者(その時まだ婚約はしていなかったが)と付き合っていた時、一度だけその彼女と”過ち未遂”をしたコトがある。
婚約者と転職でもめたからだろうか、はたまた婚約者だけしか知らないのはイヤだなぁと思っていたのか。
おそらくその両方だが、年も明ける頃、ぼくはその娘と家で飲む事になった。
男の一人暮らしの自宅で、宅飲み。
そういう流れにならない理由がなかった。
僕らはその雰囲気のままハグをし、キスの後、ベッドで夜まで愛し合った……
となればよかったのだが、さぁこれから本番、という時
その娘の言葉でぼくの戦意は完全に喪失した。
「本当にするの?」
この後の対応なんて考えるまでもない。
黙って優しくキスをして、そのまま押し倒すだけだ。
でも出来なかった。
「付き合っている人がいるのに、こんな事しちゃまずいんじゃないか」
その娘はそう思ったろう。そして、ぼくも同じ事を思ってしまった。
そのままお互い同じ布団で、長い長い夜を過ごした。
そして僕ら2人は、眠い目をこすりながら
最寄駅で別れたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1年前の記憶を振り返っていた僕は、とても気楽だった。
「今日は簡単に寝られるだろう。」
未遂とはいえ、一度は身体を許そうとした相手だ。
今度誘っても余裕でいけるに違いない。
僕は意気揚々と出る準備をし、自宅を後にした。
そして、ベッドの上で、まさかの拒否をされるのであったーーーーーーー
〜ここから先は、noteで読むことができます〜
画像:無料写真素材AC
=Tawiga=